関西の着地型の未来 日本観光振興協会・シンポ(2) 信念・こつこつ・一点突破
NPO法人北近畿みらい理事長の四方八州男さんは元綾部市長。市長時代に広域連携を模索したが自治体の壁に阻まれた経験からNPOを設立し域内連携を図ってきた。
共通キーワードは「信念」「こつこつ」「一点突破」
そこで気付いたのが(1)地域のコミュニティ(2)リーダーの存在(3)都市農村の交流(4)小さな産業―の4要素の存在。「これさえあればなんとかなりそうな確信を深めています」と四方さんは語る。
問題は「一歩踏み出すこと」。着地型は収益につながりにくいが「いろいろとやってみて積み上げることが可能性を広げる。積み上げて一点突破」と信念を強調した。
和歌山県・田辺市熊野コンベンションビューロー会長の多田稔子さんは持続可能な観光地づくりとDMC(観光まちづくり事業体)の設立への取り組みを紹介。市町村合併で多くの旧自治体を抱えるが、「まちは世界遺産熊野」を合言葉に、あえて地域を平準化せずに一点突破を目指す。これは行政では難しく「民間の強み」だという。
「ブームよりルーツ」を基本スタンスにインバウンド拡大に戦略を設定。地元旅館や民宿に協力を求め、受け入れ態勢を整備したほか、旅行業第2種を取得し予約からプランニング、現地対応まで力を注ぐ。
単なるDMCではなく、ハイテクとローテクを融合させ、地元と協働しながら「コミュニティープロデュースカンパニーを目指す」と多田さん。「近い将来を思って、こつこつとチャレンジすべき」と着地型発展への思いを語った。
京都旅企画代表の滑田教夫さんは、京都のまちづくりとして伝統産業体験など着地主導の企画を展開し、昨年は4万3千人を集客。敷居が高いとのイメージから観光客が集まらなかった祇園でマップづくりからまちづくりを始めた事例を紹介した。「老舗が多く、はじめは地元から賛同を得られませんでしたが、説得を重ね、次第に周囲を巻き込んでいきました」。今では修学旅行を切り口に市内の産業体験メニューに多くの老舗などが協力するようになったという。
三重県尾鷲市で熊野古道を生かしたまちづくりを行うくまの体験企画代表の内山裕紀子さんは、ツアー客がまちに立ち寄らず古道を歩いて帰るだけの現状を打破しようと、古道とまちをつなぐエコツアーを企画。地元の人を巻き込みながら地域の良さを伝え、まちを元気にしたいと訴えた。
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