旅行業は"笑売" 日旅平田さんが講演「ほんまもんのサービスはこれや!」(2)
「僕のツアーに何度もリピートしてくれた女性が来なくなりました。どうしたんやろ?と思っていたら、ご主人が車いす生活になってしもたと言うんです」
PCにできない仕事 旅に夢と付加価値を
「奥さんも介護で疲れてはるんです。だから介護福祉士さんと組んで『快護ツアー』を企画しました。車いすは個性です。奥さんの代わりに僕らが車いすを押して、ご主人と一緒にお風呂にも入りました。その間、奥さんは1人でのんびりしてもらった。そして、旅行から帰ってきて奥さんからうれしいご報告をいただきました。ご主人がつかまり立ちができるようになったそうです。『あんなオモロイ旅行初めてや、もう1回行くで』と言って、それが回復のパワーになったと教えてくれました」
だけど、と平田さんは旅行業の現状は憂える面が少なくないともいう。
「パソコンの中には驚くぐらい安い旅行がたくさんあります。悪い油で揚げた天ぷら、向こう側が透けて見える刺し身。大手旅行会社もそんな料理の旅行を平気でやってきたし、まだやっている会社もあります」
「そんな旅行に自分の大事な親や恋人を行かせられますか」
「安もんは誰でも売れる。楽なんですわ」と、旅行商品の価格競争を末期的と評した。
「安い旅行代金で、安い手数料をとって生き残る。それでいいんでしょうか。確かに1円でも安い方がええというお客さんもいます。いくらでもええ、あんたに頼むでというお客さんもいます。実は、パソコンにできないことこそ、我々はやらないといけません」
そのため旅行会社は「僕らはお母ちゃんに食べさせたいなと思うものを企画せなあかんのです。自分が売りたいものを売るのは非日常である旅行ではないんです。夢と付加価値をつけて、あなたに会えて良かったねというツアーをやらないといけません」とし、最後に旅行会社へ就職を望む学生にこんなメッセージを送った。
「お客さんはもてなされるプロ、我々はもてなすプロやないとダメなんです。お客さんに寄り添って大切にできる。人の幸せを自分の幸せと感じられる人が添乗員です」
「お客さんの喜びを自分の喜びとできる人がサービス業のプロです」
「観光とは光を見ることです。どうぞ皆さん、自分が光ってください。僕らは1人で生きてるんやない、周りの人たちに生かされているんです。人生1回きり、自分が思いっきり光ってやろうじゃありませんか」
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