地元宿泊キャンペーン、効果に明暗(3) 鹿児島県のCPには不公平感
先着順、リアル店舗不可など混乱
一方で、鹿児島県は制度設計の不備で、県民をはじめ地元旅行会社から不平、不満、疑問の声が挙がっている。
事業は「ディスカバー鹿児島キャンペーン」。県内宿泊施設の宿泊券を県民に発行し、1人最大1万円を補助するというもの。第1弾は6月20日−7月19日宿泊分で、13日から1日2千人分ずつ、22日までの10日間で2万人分の宿泊券を発行した。
キャンペーンの事業スキームで問題になっているのは、まず予約が電話とインターネットのみで受け付けたこと。次に1日2千人分は先着順であったこと。インターネットが不得手な高齢者などにとって障壁があり、電話窓口も予約が殺到してつながりにくい。結果、本来、公平であるべき県民向け事業に不公平さを生じさせている。
また、制度上は1人1予約としていたが、氏名を漢字とアルファベットで使い分けるなどして複数回宿泊券を手に入れた事例もあったそうだ。予約システム上の不備が原因と推測されるという。県民からは「なぜ抽選ではないのか」という声も挙がっているそうだ。
さらに、地元の旅行会社や宿泊施設からの疑義も少なくない。キャンペーンが「宿泊施設への早急な支援」とし、旅行会社の窓口受付などを排除したことだ。地元に根ざして営業してきた旅行会社を排除した形で、県の言い分では、旅行会社に手数料を支払うことを避け宿泊施設への支援に特化したということだが、県内旅館ホテルからは「事業にはOTAが参画しており、OTAには手数料が発生している」といぶかる声も聞こえる。
鹿児島県旅行業協同組合の中間幹夫理事長は「OTAも観光庁登録の旅行会社です。結果、宿泊施設からは手数料も収受している。なぜ地元で長年営業してきた旅行会社を排除するのか理解できない」と憤る。制度上は県内の大手旅行会社の窓口でも受付はできるそうなのだが、その場合、旅行会社は無償ボランティアで宿泊手配することになるという。
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