海の京都に移住した若者たち 関係人口をつくる、増やす−里山ゲストハウスクチュール経営・工忠照幸さん(1)/短期連載シリーズ
「都市から地方への移住と言えば2009年に始まった『地域おこし協力隊』が知られるが、(中略)2011年の東北大震災を機に移住の傾向が変わり、田舎で農業する移住だけではなく、多業・兼業・副業の生き方やローカルベンチャーの2通りをやる場として地方を求めている。地域のジジやババがいる。自然あふれる田舎で子供を育てたいと考える若者がいる」(日本総研・井上岳一氏著「日本列島回復論」から)。京都府北部の「海の京都」エリアでもそんな若者が増えている。 (観光交流アドバイザー・釼菱英明)
移住者の「天職」に寄り添う
舞鶴市の南側に位置し、推計人口が約3万1400人の綾部市。繊維・機械産業が盛んでグンゼ発祥の地であり、1990年代半ばから塩見直紀氏が提唱する「半農半X(エックス)」の発祥地としても知られる。
その綾部市に2015年、訪日外国人をターゲットにした「里山ゲストハウス クチュール」を開業したのが、工忠照幸さん(45歳)。同時に、旅行業MATA TABIとして観光ツアーや移住に焦点を当てた「天職観光」を展開、英語の通訳案内士としても活動している。
大阪府吹田市出身で、19歳の時から約7年間バックパッカーとして世界を2周し、帰国後は京都市内のホテルマンや海外の秘境専門の添乗員を経験してきた。所属していた旅行会社の突然の倒産を機に綾部市へ移住。「里山でゲストハウスを経営する」という目標に向かって歩き出したのが13年、37歳の時だった。

綾部市の里山の風景
6年後の19年には年間500名超をゲストハウスに迎え入れ、半数は外国人客。さらに彼が関わった人で移住したのが20年で3組6名、移住間際が1組2名。コロナ禍の今、移住希望者は日本ばかりか海外からも相談があるという。
相談者の多くは、移住後に農業を志向しているわけではない。自分の生き方を実践する場として移住を検討しているそうだ。そんな彼らは試しでクチュールに1カ月滞在。移住希望者の人となりを観察し、見極めもする。小学校や近隣を案内しながら、綾部の人との出会いの場も提供する。
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