“民の力”で迎えた市制100年・北海道小樽市(1) 迫俊哉市長に聞く−「北の商都」で日本遺産目指す
北海道を代表する観光都市の一つ小樽市。明治期の近代建築群、運河など著名な観光スポットが市内に点在する。市制100周年という節目の年を迎える今、「民の力で形成された小樽市のまちづくり」について迫(はざま)俊哉市長に話を聞いた。
民間主導のまちづくりを顕彰
−大正11年(1922年)8月に市制が施行され、今年100周年を迎えられました。
迫 小樽市の100年を振り返ると、民の力で創られてきたまちだと実感しています。もともと北海道経済の中枢で「北のウォール街」と称されていたように、商業や金融の拠点でした。ここ市役所の庁舎も昭和8年に民間の皆さんの協力で建てられています。現在の小樽商科大学は経済界の皆さんが人材を育成しようと小樽高等商業学校として誘致したものです。そこで今、小樽市単独で文化庁が進める日本遺産を目指そうとしていますが、そのテーマが「北海道の『心臓』と呼ばれたまち・小樽」で、副題として「民の力で創られ蘇った北の商都」としています。
−民間主導のまちづくりを改めて顕彰するということですね。
迫 そうです。昭和40年代には、運河の保存運動がありました。行政は交通円滑化のため運河を廃止し道路にしようというプランを作ったのですが、住民が反発しまちを二分する論争になりました。最終的には半分を埋め立て、半分を残すという今の形になったのです。この運河保存運動が全国に紹介され、それにより小樽は改めて注目されました。これもまた、民の力です。運河保存運動を経て、町並みも大事に守っていこうという気運が醸成され、今の観光都市としての地位ができあがりました。その町並みは、北前船の船主が石造りの倉庫をつくったことに始まっていますから、小樽は民の力で創られ、育てられたまちと言えます。
−手宮線跡も保存されていますね。
迫 北海道で一番初めに敷かれた幌内鉄道として今年で140年になります。市制100年と一緒に祝賀行事ができないかと検討しています。運河は来年竣工100年を迎えることから、節目の年が続きます。手宮線も民の力で残ったと言えます。
−小樽市の価値をどのように捉えていますか。
迫 小樽は「屋根のない博物館」と称されるほど明治から昭和のはじめにかけての町並みが色濃く残っています。その歴史とともに、札幌にはない海と港があります。港は観光のみならず、まちづくりにも大切な存在で今、小樽港第3号ふ頭を13−14万トン級の大型クルーズ客船に対応できるよう国の直轄事業として整備を進めているほか、イベント広場を整備し民間が商業施設も設け、将来的には国土交通省が進める「みなとオアシス」を申請する予定です。歴史だけはなくて海、港を生かしたまちづくりが小樽にとって強みであり、進めていかなければなりません。港にいろいろな機能を積み上げていくことによって滞在時間の延長や消費を増やし、質の高い観光につなげていきたいと思っています。
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