誰もが旅を楽しめる兵庫県(4) ひょうごユニバーサルな観光地
城崎温泉、湯村温泉、丹波篠山で3モデル 安心安全な回遊性高める
高齢者・障がい者らがより安全で便利・快適に移動・観光できる環境づくりのためには〝点”での取り組みだけでなく、観光地全体の回遊性を高める〝面”での取り組みが不可欠だ。そこで、地域を挙げてUTに取り組む「ひょうごユニバーサルな観光地」として昨年9月に城崎温泉地区(豊岡市)、湯村温泉地区(新温泉町)、丹波篠山市を選定。24―25年の2カ年にわたり、地域ぐるみの取り組みをモデル的に支援している。
【城崎温泉】
風情あふれる街並みが魅力の城崎温泉を楽しむうえで、そぞろ歩きと外湯めぐりは欠かせない。
城崎温泉駅前の「城崎温泉観光センター」では電動車いすの貸出やユニバーサル情報の提供を行い、街中10カ所には誰でも無料で利用できる「城崎温泉みんなの傘」を設置するなど、安心して散策を楽しめるよう温泉街全体でユニバーサルな取り組みを進めている。今後はユニバーサルマップの作成やピクトグラム設置のほか、城崎温泉駅と各宿泊施設を結ぶ巡回バスを福祉バスへ変更するなど、高齢者や障がい者がさらに移動がしやすく、そぞろ歩きを楽しめる温泉街を目指す。

城崎温泉の温泉街を車いすで散策する
外湯めぐりに関しては「地蔵湯」のエントランスを滑りにくい床材にするほか、「柳湯」の足湯を車いすに乗ったままでも利用できるようにするなど順次改修を予定。さらに、シャワーチェアや触覚識別できるシャンプーボトルを設置するなど、ソフト面の取り組みも進めている。
【湯村温泉】
日本屈指の高熱温泉を誇る湯村温泉のシンボル、源泉の「荒湯」。98度の熱湯が毎分470㍑も湧出しており、その高温の湯壺を使って卵や野菜をゆでる「湯がき体験」が人気を集める。今後、車いすでも安全に湯がき体験ができるユニバーサル湯がき湯壺や、ユニバーサル足湯の設置が予定されている。

湯村温泉の荒湯周辺を車いすで散策
地元の人々にも愛される公衆浴場の「薬師湯」の館内はバリアフリーとなっており、貸切で利用できる介助風呂が2つある。今後は足湯(ジロンボの湯、タロンボの湯)を車いすでも利用できるよう改修予定。
さらに、温泉街の各所で、店舗の入り口の段差を解消する仮設スロープを準備するほか、町中の看板を車いす利用者の目線でも見やすい高さに変更するなど、町の動線の整備も進めている。
【丹波篠山市】
丹波篠山は、江戸時代の面影を伝える商家群や武家屋敷が残る城下町。
1609年(慶長14年)に徳川家康の命により築かれ、2000年に大書院が復元された篠山城。大書院内の段差にはスロープがあり、車いすで周遊できる。また、かつて城下町として栄えた河原町妻入商家群や篠山城跡周辺は、無電柱化や幅の広い歩道の整備、歩道の段差や傾斜の改善により、散策しやすい。

歩道の段差を解消した
丹波篠山市の河原町妻入商家群
今後は、公衆トイレの洋式化や観光案内所へのローカウンターの設置などを予定。古き良き歴史や文化を守るために、バリアフリー化は最小限にとどめる必要があるが、ハード面でクリアできないところはソフト面でカバーできるよう、多言語化・ピクトグラム化した看板の設置や貸出用車いすの整備を予定している。
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