嬉野市が射程するまちづくり 村上大祐市長VS山田桂一郎氏対談(1) コロナ禍のあと/佐賀嬉野特集
佐賀県嬉野市(村上大祐市長)に2022年秋、西九州新幹線・嬉野温泉駅が開業することを控え、転換期を迎えた嬉野市の観光まちづくりについて村上市長と、観光カリスマでトラベルニュースat本紙「NATO廃絶」でお馴染みの山田桂一郎さんに対談していただいた。未来を射程した嬉野市のまちづくりとは−。
観光をつくるのはインフラではなく人
−まず村上市長にお尋ねします。嬉野市の観光の現状、山田桂一郎さんを迎えて進める観光まちづくりについて教えてください。
村上 コロナ禍以降、かなり観光関係全体が落ち込んでいます。これは全国的に同じですが、特に嬉野市における観光は商店や卸売事業者などと密接につながり、地域内で食材の調達などが行われていることから、連鎖的に痛手を被っている現状です。我々としても域内消費を高めていく観点から、市民限定の宿泊キャンペーンを武雄市と共同で実施し連携を強化しているほか、県内限定のキャンペーンにより商工支援を行ってきました。
反面、観光客を迎える地域でありながら、人口当たりの感染者数は県内で2番目に低い。クラスターもゼロですから、事業者が気をつけていただいたおかげだろうと思っています。Go Toトラベルキャンペーンがウイルスを拡散したという言説が流布されましたが、それを反駁(はんばく)しているのが嬉野市ではないかなと思うぐらいです。
そういった中で、守りのことばかりではなく、2022年の西九州新幹線開業に向けて、まちづくりをどうしていくのかというのが現状です。まさに和歌山大学との連携や観光振興のための人づくりは、今からでも遅くないし長期的な問題ですので、しっかり足をつけて取り組みます。特に、観光をつくるのはインフラではなく人だと思っていますので、人づくりをしっかり進めていきたいと考えています。
−山田さんは全国の地域に関わっている中で、この時期だからこそできることがあるとお考えではないですか。
山田 市長が仰ったように、嬉野市は皆さんが頑張ってきたからクラスターが発生しませんでしたし、自分たちが意外と域内で密接に取引していたことなど、関係が見えてきました。コロナ禍になって今までグレーだったこと、隠れていたもの、地域が抱える課題が現実問題として目の前にはっきり出てきました。先送りしていたことも緊急な課題として目の前に出てきて、すべてが明らかになったという面があると思います。要は白黒がはっきりしたことで、やらなければいけないことが分かった。そこに対して動いたところ、動けなかったところ、動かなかったところで明暗が分かれそうです。今後、コロナ禍が収束に向かう中で、Go Toトラベルやワクチン検査パッケージを使った移動が再開すると、準備をしていた地域や積極的に動いていた地域の方が確実に伸び、人流が戻るのが早いというのがはっきりしそうです。
それは今もすでに現れていて、リベンジ消費やリバウンド消費も全国一律なわけではありません。嬉野市は戻りが早い方です。コロナ禍でも可能な手を尽くしてきたことで、お客様が安心して来ています。
村上 観光地として有名なだけにクラスターが出たら、その後に出るダメージは計りしれません。緊張感を持って対応してきました。
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