嬉野市が射程するまちづくり 村上大祐市長VS山田桂一郎氏対談(3) 人づくりの要諦/佐賀嬉野特集
人材育成でメッカを目指す 新幹線が次代の担い手育成
−将来的に武雄市や有田町の人たちに集まってもらえればいいですね。
山田 それが大事です。世界的に見てもあらゆる分野でトップ人材を育てるところがメッカになります。例えばアウトドアの世界でいまだにシャモニーと言われるのは、フランス国立スキー登山学校があるからです。フランス人以外の人たちも世界各地から集まってきています。ホテル・ホスピタリティ産業に関しても、アメリカのコーネルやセントラルフロリダだと言われますが、スイスのホテル観光学校が圧倒的に強く、NBAを取得するという動きもあります。人材育成をしているところがその分野の中心地になるのです。
村上 我々もそうありたいですね。
山田 いろんな教育機関がありますが、都会でやらずに地方や温泉地でやる。国立スキー登山学校がパリのど真ん中にあったら変ですから。現場で、そのフィールドで人材育成をしなければ意味がありません。九州の観光人材育成は嬉野温泉でなければとなり、卒業後はここで働くのが一番だという形になれば理想だと思います。
村上 地政学的にも西九州の中心だと思います。観光のハブになり得るかなと思います。
山田 和歌山大学も各地にサテライトを作っていますが、嬉野市内にも新しいサテライトができる可能性もあるかもしれません。
村上 やはり、それぐらい長期の展望に立たなければ教育機関、研究機関は誘致できませんね。
山田 肥前吉田焼やお茶の世界の職人もいるわけですから、そういった人たちともツーリズムの世界で人を育てられるのは強みです。富山でも、砺波の彫刻職人や農林水産業からの多くの関わりがなければ、価値を高めることも、人材の広がりも生まれてきません。富山での三塾連携をやった後、一気に広がりが生まれたのです。
−新幹線は観光客はもちろん、いろんな人材が集まって発信していけるチャンスですね。
村上 そういうまちづくりの方針でいきたい。そもそも駅前自体、民間に委ねて民間の投資を呼び込むという方針でやっています。それは人任せではなく、嬉野の持つ価値に投資をしてくれる人を探していくというスタイルです。市としてはロータリーの整備や観光案内施設に相当する観光文化交流センターぐらいで、後は全部民間に委ねています。地元の若い経営者が自らリスクを背負って投資をする人たちを集めて、皆でこれからのまちを考える。塾参加の人もそうなのですが、次の世代を担う人たちが駅前に関わっていく人づくりの拠点だと思っています。
新幹線が来ればバラ色の未来が待っているわけではありません。この大きな交通変革を機に何をつくるのかと言うと、やはり人なんです。
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