金融機関と上手に付き合うために シリーズ「旅館ホテルの事業再生」(2-1) あきらめず「正式に申し込む」
トラベルニュース社では、コロナ禍で厳しい経営環境に見舞われている観光業界の苦境を脱するため、事業再生の専門家とチームを結成、今後セミナーや個別相談会の開催を予定しています。チームのメンバーの一人、みらいホールディングス(名古屋市)の渡邉安洋さんにご寄稿いただいた「金融機関との上手な付き合い方」について、前回に続き掲載します。
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もう一つ、金融機関との付き合い方で重要なのは、「正式に申し込む」ということです。
何の話かと思われるかもしれませんが、宿泊業の社長は昔からの銀行との付き合いで、ニュアンス(あうんの呼吸)だけで融資を断られた。または、普段話している感じで土台無理な話、とそもそもあきらめてしまっているケースが非常に多く、実は正式に申し込んでいない、または申し込んだと金融機関側が判断していないケースが非常に多いのです。
これは非常にもったいない話で、金融機関というのは、正式に融資を申し込まれると、特に書面で申し込まれると、銀行に持ち帰り、上席に報告、稟議をあげないといけません。書面で提出されたものを正式に断るのは、簡単ではないのです。
特に、制度融資などでは、正式に断った場合は「謝絶」の記録が残り、その履歴も監督官庁への報告義務があり、簡単には「謝絶」はできないのが実情です(適正に判断され、「謝絶」という結論ももちろんあります)。
金融機関からのニュアンスだけであきらめてしまう前に、正式に書面で依頼してみるのもひとつの手だと思います。申し込む前から、ダメだとあきらめている会社さんは非常にもったいないのです。
このように、金融機関と上手く付き合っていくことが宿泊業にとっては非常に重要で、そのうえで、売上のトップラインを伸ばす各種方策を講じていく必要があると思います。
渡邉安洋さん=みらい経営シニアパートナー兼アットインホテル事業部の取締役、みらいホールディングス新規事業企画および特命プロジェクトへの参画なども兼務。中小企業再生支援協議会案件、RCC(整理回収機構)案件、地方銀行案件等、事業再生に従事している。1981年1月生まれ、愛知県出身。
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