若い子には"地旅"をさせろ(1) 産官学3氏が「地旅鼎談」
東海道五十三次を模した桃山式の庭園が美しい熊本市の水前寺成趣園(水前寺公園)。阿蘇の伏流水を湛えた池のほとりに建つ古今伝授の間は、約400年前に京都御苑に建てられ、細川家初代・幽斎がこの地に移築した。当時の日本の学問の最高峰だった古今和歌集の奥義を伝授したことに名の由来を持つこの建物で5月24日、産官学を代表して3人が集った。1999年から着地型旅行を提唱し普及に努めてきた全旅の池田孝昭社長、くまモンをフックに観光振興を進める熊本県観光経済交流局の渡辺純一局長、観光産業論を専門とする東海大学経営学部の宮内順教授。3氏は新しい観光の形態としての地旅の可能性を論じ、次代を担う若者へ地旅の伝授を歴史ある建物で誓った―。
地旅はまさに地域づくり 渡辺・熊本県観光経済交流局長
―地旅、着地型旅行についてそれぞれの立場からお話しいただきたい。
渡辺 本県では平成24年に4カ年計画「ようこそくまもと観光立県推進計画」を作りました。これは、22年の640万人の宿泊客を27年までの4年間に750万人に、そのうち外国人観光客数を30万人から50万人にしようというものです。計画では阿蘇、天草、熊本城などの定番観光地をタテ軸に、温泉と食、水をヨコ軸として力を入れています。
特に温泉については、熊本県は源泉数が全国第5位なのですが知名度が低い。そこで「くまもとおふろ読本」を作り、美人の湯・癒しの湯・子宝の湯と効能別に3種類に区分けし温泉地、旅館ごとにリストアップしたPRを始めています。昨年10月には県観光課内に、お風呂とプロモーションを掛け合わせた造語で「くまもとふろモーション課」も作りました。ちなみに私が初代課長です。
その中で地旅は、地域づくりの非常に有効な手段だと思っています。地旅には2つメリットがあります。一つは地元で企画した旅行に来ていただいて、地元で消費していただくこと。もう一つは地旅の理念にもありますが、地域を誇りに感じている人たちがおもてなしする旅であるということ。熊本県でも数々の地旅のコースを造られています。薬草を摘みその場で薬草料理を作り、観光資源としてサメ漁の見学といったものもあります。
そこに住んでいる方々が地域を誇りに思い、ぜひ地域を見ていただきたいという気持ちが企画を立てる力になっており、地旅はまさに地域づくりだと思っています。
→若い子には"地旅"をさせろ(2) 地域づくりの有効手段に続く