比叡山と港-地域発信で飛躍図る滋賀おごと温泉(2) 旅館より地域を売る
―そういう意味では本当に地元の方に愛される存在になったんですね。
榎 やっぱり、2008年のダイヤ改正で雄琴駅から「おごと温泉駅」と駅名が改名されたことが大きかったですね。
ブランド力とエリア戦略
佐藤 我々が観光協会の役員になったころは団結力がよくテーマ性や方向性が明確でしたし、これまでの積み重ねがある中で今ちょうど形になりつつあるのが実感できる時期なんです。
金子博 今までは、おごと温泉の名前を売ることに一生懸命でした。ここを選んでいただくためには、旅館だけではないわざわざ来ていただける魅力を説明しないといけません。だからこそ、比叡山に一番近い温泉、琵琶湖に面している温泉ということで、お山(比叡山)や湖の魅力を発信することが本当に大事だと思っています。ホームページをリニューアルし、フェイスブックもかなりの頻度で発信し、地域として選んでいただけることを有言実行で取り組んでいっているという感じです。
佐藤 会長の行動力はすごいです。3日に一度ぐらい、お山に登っていますから。
―中山さんや川戸さんから見て、おごと温泉をどう感じていますか。
中山 私が今日ここにいるのも、その行動力の賜物ではないかと思います。おごと温泉の役員の皆さんと同様、延暦寺も役員が若返りました。皆さんの同級生の方々が役員になり、言うなれば絵が描きやすくなってきました。同じ目線で見ていけるのではないかと思います。
川戸 昔は自分の旅館を何とか売りたい、発地型でエージェントに売ってもらうことが情報発信の一番大きなことでした。エージェント、キャリアと情報発信が世の中の流れを左右していました。それが今、お客様が選択する時代です。選択するカテゴリーの順番がエージェントと違う。エージェントは宿泊地の旅館を決めて旅行を組み立てていく。お客様は行くエリアでまず選択し、そのエリアの中でどこを回るかという順番で決めていくわけです。
その中で、おごと温泉ではいち早く、それぞれの旅館ではなく温泉地をどう売っていくかに方向づけし、今度はエリア一帯を売っていくことに取り組み、比叡山、世界遺産の延暦寺に一番近いということで売り出されている。そうすると、比叡山に行かれたお客様はおごと温泉につながっていく。
そういう流れの中で、私どももミシガンなどの船を施設としてアピールし、好感度を上げていくことが集客するということでした。だけど、宿泊ならおごと温泉、お訪ねいただくのでしたら世界遺産の比叡山、そして日本一の琵琶湖。それが京都からこんなに近くにあり便利に行けるという情報がお客様の選択肢にとって一番優先順位が高いのではないか、と。エリアの中でお客様が頭の中にイメージが描けるような、ブランド力によるエリア戦略が重要ではないかと思います。
今少し考えているんですけど、船や京阪電車、ケーブルカーがこの地域にあります。マイカーが観光の手段になり、その間に乗り物が移動の手段になり過ぎてしまった。移動手段が観光の手段でもあるという原点に返って、乗り物自体も観光の一つの大きなソフトになるようネットワークしていくことも必要だと思っています。
まだまだ時間はかかりますが、大津とおごと、おごとと坂本、比叡山を結んで巡回型のネットワークを作りたい。京阪電車は坂本まで来ているので、おごと温泉までは新しいトローリーバスのような形で結ぶ。巡るというのは観光の原点だと思うんです。
延暦寺も若手になってきておられ、おごと温泉は世代交代がうまくいっています。今や、おごと温泉、このエリアは最初の収穫期を迎えておられるのではないかという気がしています。
→比叡山と港-地域発信で飛躍図る滋賀おごと温泉(3) 天台三総本山と一緒にに続く
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