「どっぷり高知旅」―四万十に浸る時間(2) 四万十市観光協会、風土を味わう体験を商品化
自転車と伝統漁法で深掘り
高知県が展開している「どっぷり高知旅」で各地が観光の磨き上げに取り組んでいるが、その積極性が目立つのが四万十市観光協会。キャンペーン内での事業、商品化に参画し、地域の魅力を観光素材として具現化させている。清流・四万十川を中心に豊かな自然と風土が育まれてきた四万十市。旅人に“どっぷり”と癒しの世界に浸かってもらう受け入れ態勢は万全だ。
キャンペーンでは①オススメどっぷり旅コンテスト②周遊促進・滞在延長支援事業③商品造成エリア応募―の3種の事業公募を設定。同観光協会はこのすべてに応募した数少ない組織だ。このうち①と②はすでに採択されている。
特に目立つのが「オススメどっぷり旅コンテスト」での成果。近年、同観光協会は観光素材の事業化、商品化への動きを急加速させ、旅行会社から商品化を実現、観光庁の観光再始動事業でも認定されるなど着実に実績を重ねてきた。それがコンテストでエリア内の1位に選定されるという形で実を結んだ。
商品は、サイクリングと伝統漁法体験。沈下橋をはじめ四万十川独特の風景、川と生きてきた地元の暮らしを案内人から聞きながら川沿いのサイクリングを楽しみ、地元漁師と実際の道具を使った伝統漁法を仕掛け、ウナギや川エビ、ゴリなどを翌朝に漁獲する。加えて、7人乗りのメガサップを河原に置きベンチ代わりにして清流に素足を浸けながら、コーヒーミルで豆を挽いて煎れたコーヒーを飲み、ゆっくりと流れる“四万十時間”を過ごすという、まさにここだけの風土を味わう商品を実現させた。
この商品は23年にJTBのキャンペーン「日本の旬」で商品化。観光庁の観光再始動事業でバージョンアップ、アジアからインバウンドを対象にモニターを実施し、商品を精査・磨き上げを行い、今回の「どっぷり高知旅」のコンテンツに採用された。JTBの商品では販売窓口で申し込みを受け、仮予約で発生手配デスクに連絡が行き、そこから観光協会に手配依頼が届き、観光協会が関連事業者に仕入・手配をして、発生手配デスクからお客に予約確定連絡を行うため販売窓口は販売に専念できる。ワンストップで商品を販売、催行できる流れも整えた。
また、街歩きガイド「LOILOIしまんと」で四万十市中村の応仁の乱の時代に一條教房公が整備した街を巡るツアーも用意。「周遊促進・滞在延長支援事業」では四万十市と県の支援で運行している四万十川バスを活用した周遊促進事業が採択。「オススメどっぷり旅コンテスト」の場所も含む四万十川下流域から中流域をバスで周遊する。「商品造成エリア応募」では四万十川・田出ノ川地区を中心にエリアごとにサイクリングモデルコースや観光モデルコースを作成し、滞在型コンテンツとして応募している。
現在、各旅行会社の連泊商品のオプションとして商品を提案するなど展開の拡大に取り組む。同観光協会では「地元に密着している組織だからこそ地元ならではの深堀りした提案ができ、連泊につなげられます。国内旅行市場が縮小する中で、新しい人に来てもらう従来型から、同じ人が連泊することで延べ人数が増え、地元の本物の良さを知ってもらえる機会が増える」と自信と期待を示す。インバウンドに対しても「欧米豪の高付加価値志向にも通じる地元の深堀り商品を提案できた先に、本来のワーケーションとしての展開に広がっていくと考えています」と話している。
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