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金融機関と上手に付き合うために シリーズ「旅館ホテルの事業再生」(1-2) 装置産業であり先行投資型の構造

その中でも、宿泊業は特に金融機関との付き合い方が重要となってきます。

実は、金融機関から相談を受ける中で、宿泊業の相談が一番多いのです。宿泊業が多い理由は、もちろん業績が厳しいためという理由もありますが、もう一方では、他業種と比較して借入が多大であるという理由もあります。それは皆さんご想像のとおり宿泊業が装置産業であり、先行投資型の商売構造によるためです。そのため、他の業種以上に金融機関との付き合い方が非常に重要となる業界なのです。

各地で宿泊業を営んでおられる皆様は、地元の名士さんの家系であることが多く(実際に私が出会ってきた多くの宿泊業のオーナーさんは名士である方が非常に多かったです)、かつては金融機関からVIP先とも呼ばれ「借りてほしい」とセールスを受けてばかりであったと昔話をお聞きすることがよくあります。

多くの宿泊業者の過去の経緯を紐解くと、やはりバブル崩壊を潮目に金融機関の態度が変化していったケースを多く見かけます。その要因の一つは高度経済成長期から続いてきた、従来型のビジネスモデル(観光バスで宴会付きの各種団体旅行、社員旅行など)が終えんし業績が悪化したことも大きな要因ですが、それ以上に金融機関側の事情も大きく影響していることは否めません。

金融機関側の事情とは、バブル崩壊のころから金融機関の破綻が相次ぎ、金融庁が設置されました。金融庁が設置された中で一番大きな変化は「金融検査マニュアル」が導入されたことです。マニュアルの中では、貸出先をスコアリングし「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」などに区分し、貸す、貸せないの判断をされ、その区分によって金利も影響を受けることとなりました。

当時は不動産融資をはじめとした無謀な融資判断が多く、不良債権が莫大な額となり、当時マスコミが騒ぎ立てたのは皆さんの記憶にあるのではと思います。それら過ちを繰り返さないため、金融検査マニュアルという指針ができたことは金融の正常化のためには必要であったと思います。

ただし、そのスコアリングには、債務償還年数(その時の収益で何年で返済できるか)や実態債務超過(不動産などを評価し、会社の実態価値を算定)が大きく影響します。それらは先行投資が必要な装置産業である宿泊業には非常に不利な内容でした。多くの会社で債務償還年数が長すぎる、不動産価値を査定すると実態は多大な債務超過に陥っている、と判断され、追加融資できないどころか、当時は貸しはがしすら横行しました。

このころから宿泊業、特に地方の温泉街をはじめとしたホテル・旅館業に対する金融機関の対応が非常に厳しくなったケースを多く見かけます。

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