2020を刻む
「観光史」に2020年はどんなふうに記されるのだろうか。
我々には、このコロナ禍がいつ収束するのか見当がつかないので、観光が産業として成立した有史以来、未曽有の危機に陥ってしまったことはわかる。
でも、後世から見ると2020年は違って見えるのかもしれない。
「えー、本日はツーリズム産業史において、一大エポックメーキングな時代をとりあげたい」
「2020のことですね」
「そうだ。君たちは染後生まれだ。私は染中派で当時、旅行会社に勤めていた。その経験から、こうしてツーリズム大学で教鞭をとるようになったのだ。染後、当たり前になったワーケーションは2020年が発祥年と言われている」
「そうだったんですか」
「当時の旅行会社は、リアルエージェントとOTAに二分されていた。OTAは皆も利用したことがあるから分かるだろうが、リアルエージェントって言葉はわかるか」
「いえ、もしかして今でいうTCA、つまりツーリズム・コンサルティング・エージェントのことでしょうか」
「そうだ。染中下においては、マスクなど新しい生活様式が必須になり、それに合わせて旅行者のライフスタイルまでをも提案することが旅行会社に求められた。その結果、一人ひとりの旅行者の要望に合わせたツーリズムを提案することはもちろん、コミュニケーションの手段としてツーリズムの役割が一層高まり、グループや団体での旅行ニーズに応えるTCAが確立したのだ」
「なんか意外な感じがします。僕らにとってOTAとTCAは似て非なるものという感じです」
「いい指摘だ。染中、私は在宅勤務を余儀なくされてね、いやリモートワークか。同僚と言えども直接会うことがままならなかったんだよ。そのころ大ヒットしたドラマがあった。そのドラマで毎回のように同僚と飲みに行く場面があってね。ノミュニケーションがうらやましいと思って見ていたのさ…。ん? そうか君たちにノミュニケーションは死語かもしれないな。ま、それはいい。ドラマの主人公は毎度『倍返し』というのが決まり台詞で、それと『感謝と恩返し』『顧客第一主義』が…」
「せ、先生、それってTCAの多くが掲げている言葉では」
「そうだ、TCAが地元の旅館や観光施設、住民と協働して開発したツーリズムがまさに地域への感謝と恩返しであり、旅行者とコミュニケーションを深めてつくるツーリズムが顧客第一主義なのだ」
とんでもなかったこの1年を1日も早く述懐できればと願いながら、2021年は皆が笑顔で過ごせる年でありますように。引き続きトラベルニュースをよろしくお願い申し上げます。
よい年をお迎えください。
株式会社トラベルニュース社編集部
編集長
富本 一幸
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