状況のせいにはしない
斬新なアイデアで出版界の常識を打ち破り、次々とベストセラーを生み出す幻冬舎の社長、見城徹さんが書いた「編集者という病い」(太田出版)という本がある。この中で「『文芸物が売れない、本が売れない、活字離れが大きな原因だ』って出版界の人は言っている。今の出版不況、経済不況のせいで『編集者といえども読者や市場を考えざるを得なくなった。営業センスを持てるか否かが本当の勝負になってくる』と。これが出版界の通説になっている」ことを紹介しつつ、この通説に対し「違う」と言い切る。
また「書き手に対してキッチリと体重をかけていないから、読者をつかめる本がつくれない。売れないことを状況のせいにし、なぜ売れないか自問自答しないところに原因がある」と指摘する。
ノンフィクション作家の佐野眞一さんの「この国の品質」(ビジネス社)でもネット書店や巨大書店の進出で、個性的な「町の本屋さん」が相次いで閉店に追い込まれていると報告している。少し古い情報だが2003年1年間だけで1600の書店が転廃業したのだそうだ。
佐野さんは読者が「日本一大きな書店」だから買いに行くのではなく、「店員一人ひとりの商品知識が豊富で、おやっと思わせる本が並んでいる店が、ヘビーユーザーにとって最もいい店である」ことも紹介し、こだわりの「町の本屋さん」にエールを贈っている。
町の本屋さんほど「町の旅行屋さん」の数は減っていないだろうが、この2冊に書かれてあることを旅行会社で働く人たちは真摯に受け止める必要があるのではないか。
(トラベルニュースat 08年2月10日号)