日本柔道と観光業界
今年8月に開かれる北京オリンピック。金メダルを狙う日本柔道の姿をNHKが「JUDOを学べ―日本柔道金メダルへの苦闘」として放送していた。
間合い、一本勝ちを重視する日本柔道が、タックルや反り投げといった日本柔道と異なる技や世界基準のルールに対応できず苦しむ姿を残酷なまでに映し出し、日本柔道のスタイルにこだわり敗退する井上康生、世界柔道のルールを取り入れ勝利した石井慧のそれぞれ違った生き方が印象的だった。
営業譲渡や廃業、倒産・破産を入れると毎日4軒の旅館が淘汰されているという。ある県旅館組合では10年前と比べて約280軒が廃業したという報告があるほか、全国の旅館の70%が赤字経営というショッキングなデータもある。一生懸命に営業努力をしても赤字というのは、業態そのものが収益を生まない体質だということを暴露していることになり、深刻な問題だ。宿泊の予約があっても働き手がなく客をとれないという話も聞く。
旅行会社や旅館の案内所も同じような悩みを抱えており、いってみれば既存の観光業界がまったく新しいビジネスモデルの構築を迫られている恰好だ。日本柔道が世界基準のルールに対応できずに苦戦しているのと同じように、観光業界も消費者の求めているものや世の中の動きを捉え、金融関係との折衝を含めて、これかれの時代を生き抜いていくためのシステムを再構築しなければならない時代になっているといっていい。
特に今年になってから貧窮する事態が続いており、各組織、各企業がどのような手を打てるのか問われている。
(トラベルニュースat 08年6月10日号)