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昔ながらの宴席の文化

08/08/25

仕事の関係でいろんな旅館ホテルの宴席に出させていただくが、宴が始まるとすぐに名刺交換やあいさつに動き回る人たちを見て「せっかくの料理がもったいないなぁ」と思う。

せっかく熱いものはは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに料理を出しているのに、箸をつけないまま席を立たれる料理人は気の毒だ。料理をおいしくいただきながら、酒を酌み交わす、いい形の宴席のスタイルはないものかと常々考えていた。今年、縁あって岐阜県・飛騨高山のTホテルの別邸オープン披露式典に呼んでいただいたときのこと。乾杯が終わり宴に入っても誰も席を立たないので、どうしてか聞いてみた。

すると「飛騨地方には昔から祝いの席や宴席で乾杯のあと、"めでた"と呼ぶ唱和を全員で唄い終わるまで、席を立たずに食事をするんです」。"めでた"が済むと無礼講になり、初めて席を立って酒を酌み交わすことができるのだそうだ。"めでた"は各地域でリズムや曲は違うが、あの「めでた、め~でたぁの若松さ~まよ」。同ホテルでは"めでた"が歌えないと幹部になれない。

では"めでた"は乾杯が終わって、どの段階で唄われるのか。前菜、吸い物、お造りが出てから、と決まっていて、それ以前に酒を酌み交わしに席を立とうとすると、たしなめられる。

昔ながらの宴席の文化が飛騨高山に残っているのを知ったのは大きな発見だったし、他地域でも違う形であるのかもしれないが、旅館ホテルはこういった文化を伝え残してほしい。

(トラベルニュースat 08年8月25日号)

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