観光庁の発足に思う
観光立国を推進するために10月1日、観光庁が発足した。2年前に観光立国推進基本法が制定され、昨年6月には観光立国推進基本計画を策定し、いよいよ実施段階に入った段階での観光庁発足となったわけだ。全国各地の地方自治体を見ても、少子高齢化や地域活性化に観光ほどふさわしい産業はない、と観光、観光の大合唱となっている。
しかし、実際の観光産業の現場では、インターネット予約の台頭で旅行客をとられる旅行会社、価格競争の激化や過剰投資に圧迫される旅館ホテルなど、国内旅行を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。とはいいながら投資目的で観光産業に参入している新規参入者は、今のところ懐は潤っているようにも聞く。
いってみれば既存の業界が今の時代に合ったビジネスモデルを構築できていないから、苦戦を強いられているともいえる。だからこそ、旅行会社も旅館ももっと地域を見直し、地域の人たちとともに地域をブランド化し、1人でも多くの人に来てもらおうという着地型観光が重要になってくる。そういった支援も行いますよ、というスタンスが観光庁なのだろうが、あくまでも主体者は地元の住民であり旅行会社、旅館ホテル、立ち寄り施設でなければならない。
観光庁は「住んでよし、訪れてよしの国づくり」をキャッチフレーズにしている。その「国づくり」を細部で見れば「地域」であることが重要だ。地域にこれから旅館ホテル、旅行会社がどのように関わっていけるかが既存観光産業が勝ち残っていける道であり、観光庁を盛り上げる重要な鍵ではないだろうか。
(トラベルニュースat 08年10月10日号)