真似るにも創意工夫を
「さるく」とは「まちをぶらぶら歩く」という長崎県の方言だ。長崎県では「さるく」を冠にした日本で初めての町歩き博覧会「長崎さるく博」を2006年に開き、約1008万人の参加者を集めた。07年以降も「長崎さるく」として継続した取り組みが行われている。
同じ九州・大分県の別府温泉で01年に「温泉街で行う温泉を中心としたイベント」として「別府八湯温泉泊覧会」(オンパク)が開かれ、「さるく博」もこのオンパクを運営するNPO法人からノウハウ提供を受けて実施された。長崎のように「オンパク」の名称を使わないものも含めて全国10カ所以上で、オンパクを通して地域活性化が行われている。
1つの成功例を参考にして各地域の魅力を住民と一緒に掘り起こし、情報発信することには賛同したい。しかし長崎以外の県が「さるく」、別府温泉ではない温泉が「オンパク」という名称を使うのはどうか。「さるく」は長崎の方言で、「オンパク」も別府温泉だからこそ付いた名称ではないのか。他地域や他温泉がそのまま使うようでは、工夫がなさ過ぎる。香川県の「うどんツーリズム」は、香川らしくていい。
湯めぐり手形は熊本県の黒川温泉が作り出したが、兵庫県・城崎温泉の外湯めぐりを真似て考えたものだ。そこには黒川温泉という立地と旅館の特徴を活かした知恵と工夫がある。多くの温泉地が黒川温泉を視察し取り組んだことといえば、同じ名称の「湯めぐり手形」の発行で全国の温泉地が湯めぐり手形だらけになった。真似るのはいいが、地域らしさを盛り込んだ創意工夫がほしいものだ。
(トラベルニュースat 09年2月10日号)