居心地のいい旅館とは
少なくとも年間50泊以上している人たち数人と話をしたとき、心をゆだねることのできる旅館が少ない、ということが話題になった。身体を休めにきているのに、どうも落ち着かない。客室もきれいに清掃されている。しかし何か無機質だ。そんな旅館が多すぎはしないか、というのが大半の意見で、旅館のフロントや接客係だけでなく旅館、客室全体に「人肌」の温かみというか、ほっこりとしたようなものを感じられなくなっていることが旅館で過ごす居心地の悪さにつながっている、ということになった。
旅館はホテルのように淡々としたマニュアル通りのサービス(それが悪いということではなく)とは違い、人とのふれあい、気安さ、温かみ、もっといえば人なつっこさみたいなものが"売り"であり、客もそれを求めて泊まりにいくのだと思うが、そういう人情めいたものがなくなっているところに旅館の魅力が色あせてきているのかもしれない。
旅館は家業から企業への脱皮を、と言われた時期もあるが、家業だからこそのよさを捨て、企業の悪い部分を採用した結果が現在、本来の旅館らしさがなくなっているとの見方もできる。
人とのふれあいなんて小さな旅館だからできるのであって、中規模、大規模旅館ではできない。そういってしまえばそれまでだ。泊食分離、一人旅、素泊まり、今のお客が気軽に旅行できる宿泊料金の設定。いずれも「それは当社でやれない」と言ってしまうと、現在の旅行者に来ていただかなくて結構、と自ら客を拒んでいることになってしまう。そのことに気づくべきである。
(トラベルニュースat 09年2月25日号)