平等なチャンスで勝負
ある業界団体の会合で、国の観光行政を推進する組織に属する幹部が講演。その幹部は「我々は様々な施策をつくり、旅館業界にチャンスを与えている。旅館はチャンスにあわせて業態変化を行い、多くの客が集まる場所に新しい宿泊施設をつくればいい。現実として儲けているある旅館は、そうしている。我々が与えるチャンスをものにしないと潰れていくだけだ。できない皆さんの努力が足りない」と発言したそうだ。
「儲けている旅館」をあえてここでは表記しないが、同様のことをどの旅館でできるわけはないし、またすべての旅館が努力しているのでないのも事実だろう。しかし、だからといって国が与えたチャンスをものにできず、業態変化もできない旅館は潰れるのを待つだけ、というのは暴論だろう。
チャンスといっても、幹部のいう様々な施策が果たして旅館業界に等しくチャンスを与えていることになっているのだろうか。前時代的なバラマキでもあるまいし、すべての旅館に平等というのは、そもそもありえない。偏ったチャンスで勝負しろといっても土俵に上がるチャンスがなければ勝負できるはずもなく、知恵と工夫の施しようもない。
十把一絡げに旅館業界を断じて、名指しで誉められた「儲けている旅館」も迷惑しているのではないか。
(トラベルニュースat 10年7月25日号)