"風評効果"に転じる準備
全国の旅館ホテルの宿泊予約のキャンセルが56万人―。4月12日にマスコミがこぞって報じた。観光庁が発表した。14日には、3月の訪日外国人客数が過去最大の減少率と、これまたマスコミが多数取りあげた。日本政府観光局が発表し、本紙も8面に掲載している。
これに対して「現状を伝えるだけでは観光業界がいかに悲惨な状況であるかを世に広め、旅行に出かけようとする人の足を止めてしまう」と憤りたいのは本紙も同じだ。しかしながら、マスコミとは元来そういうものだと思っておいた方がいい。
観光庁や日本政府観光局がネガティブ情報だけを発信しているのではない。担当者レベルでは一所懸命に「自粛を控えて旅行しましょう。それが観光地や被災地、ひいては日本を元気にすることにつながります」と言っているだろう。
だが、それは報道されない。キャンセルや大幅減とは文脈が異なるので同じニュースとして扱われない。加害者であることを自覚した記者が書いたとしても、デスクにバッサリと削られるだろう。
今は雌伏の時だ。じきに手のひらを返したように「風評被害に悩む観光地」という報道が相次ぐ。その時に、そのまま「大変だ」では拍車をかけるだけ。今のうちに「風評効果」を発せられるよう準備しておこう。
(トラベルニュースat 11年4月25日号)