原発と地熱、旅館と
福井県の大飯原発3号機の再稼動が話題になっているが、先日、岡山で開かれた全旅連総会の席上でも原発についての発言があった。発言者は佐賀県の理事長だった。
この理事長は「万が一の事故や取り返しのつかない犠牲が出る恐れを考えると原発は中長期的には廃絶」という考えを持つ。しかし、定期的な整備点検で1基につき数千人もの整備作業員や電力会社従業員が現地の旅館ホテルに宿泊する。佐賀県の場合、唐津市全体の宿泊産業や飲食業などへの経済波及効果は数十億になるという。「これがゼロになると我々の仲間の事業は成り立たなくなる。何か手堅い対応を考えてほしい」というのが、彼の主張だ。宿泊施設の規模を問わず、また観光地や都市といった枠を超えた組織が全旅連である以上、どのような対応ができるかは別にして、一考の余地はある。
また、原発事故の影響で自然エネルギーへの転換という考えから、地熱発電建設の話題が多くなった。日本温泉協会では温泉に与える影響から反対姿勢をとるが、各都道府県の行政は積極的に取り入れたいようだ。安全と温泉のどちらが大事なのか。その論議になると、温泉よりも安全を取るべきだということになってしまう。二項対立に単純化せず反対運動にもっていく必要がある。
(トラベルニュースat 12年7月10日号)