山中温泉と森光子
石川県山中温泉で4月27日、「森光子一座記念館」がオープン。北陸を取材中に知ったのだが、当初は正直なところ「また有名人の記念館か。そんなものに頼っても地域の活性化にはならない」と思った。いくら文化勲章と国民栄誉賞を受賞した日本を代表する女優といっても"客寄せパンダ"の効果は長続きしないものだからだ。
しかし、この記念館建設に尽力された元山中町長で現在山中商工会長の田中實さんに話を伺い、簡単にできた記念館ではないことがわかった。田中さんがまだ山中町長だったころ、舞台と浴場が併設する「山中座」オープンの際、森さんに名誉座長を依頼。何度も断られたが、最後は田中さんの粘り勝ちで承諾を得る。それ以降、森さんとの親交が始まり、昨年5月に森さんから「舞台衣装や道具などを管理してほしい」と頼まれるほどの信頼関係を築いた。
田中さんは言う。「森さんという大女優の芸の素晴らしさ、人柄の素晴らしさを山中温泉から伝えたい。記念館にはいろんな人に来ていただかないと困りますが、来ていただくというのは"結果"です。森さんの素晴らしさを伝えることが大前提です」。
この記念館は田中さんと森さんの心の絆があったればこそできた記念館で、その絆の末端を見に足を運びたい。
(トラベルニュースat 13年4月25日号)