富士登山より「月見草」
富士山が世界文化遺産に登録されて以降、富士山への登山ツアーが目立つようになり、テレビなどでもタレントらが富士登山を体験する番組も増えている。
これまで富士山への登山者は年間20万人ほどだったが、平成20年に初めて30万人を超えて以降、30万人前後の登山客で推移してきた。22年には過去最高の32万人、昨年は過去2番目の31万人と、近年富士登山ブームは続いている。
今年は7月中旬から増加傾向にあり、35万人から40万人に達するという見方もある。
世界文化遺産になった富士山に登りたいという気持ちはわからなくはないし、需要があるからこそ旅行会社もツアー造成を行うわけだ。
文化遺産になったのは富士山そのものとは別に周囲の神社、登山道、洞穴、樹型、湖が構成資産として入っている。三保の松原が最後まで議論されたのは、この構成資産としてふさわしいかどうかといった点だった。
登山ツアーもいいが、太宰治が「富士には、月見草がよく似合う」といった山梨県の御坂峠や葛飾北斎が描いた「富嶽三十六景」の景観を再認識するツアーに多くの参加者が出てこそ、文化遺産としての富士山に価値が出て、世界に認識されるのではないだろうか。
(トラベルニュースat 13年7月25日号)