和食文化伝える旅館
阪急阪神ホテルズから始まった宿泊施設のメニュー誤表示の問題があとをたたない。一流ホテルだけではなく有名百貨店まで広がり、消費者から呆れ返られている。
大手系列旅館を除いて、個人経営の日本旅館では一部誤表示を改める表記を自社ホームページで出しているところはあるが、そう目立った動きはない。先駆けて「食事メニューはすべて事前確認を徹底しており、誤表示などはございません」と言い切っているところもある。
確かに食材を安く仕入れて高く売っているのだから誤表示ではなく「偽装」と言われても仕方がない部分はあるが、今回の一連の問題をきっかけに日本の食文化を考え直していいのではないか。
数年前に著名な高級旅館の料理長から「料理人が一生懸命手間をかけ、カツオ節でダシをとった料理を出してもクレームをいただき、うま味調味料を入れた料理を出すとご満足いただくケースが目立ってきました」と聞いたことがある。1泊3―4万円取る旅館の客でさえ、本物の味がわからない時代だ。
味がわからないのなら「手抜き」でということではなく、宿泊料金低廉化に伴う原価管理に厳しくなった時代だからこそ五感や盛りつけ、器に工夫を凝らす和食文化を伝える日本旅館のあり方を考えたい。
(トラベルニュースat 13年11月25日号)