今こそGNN理論
クリント・イーストウッドが主演する映画「人生の特等席」(2012年公開)。大リーグの伝説的なスカウトマンが年齢による衰えから、その手腕を球団フロントに疑問を抱かれるが、最後は現場で培った経験と勘が認められるという話だ。
主人公は、他のスカウトマンがやるようなコンピュータにインプットされたデータを当てにしない。それどころかコンピュータの操作そのものができない。目星をつけた選手の試合に直接足を運んで見極め、スカウトするかどうかを判断する現場主義者だ。主人公に対抗するスカウトマンは、自身は現場に行かずコンピュータがはじき出すデータ重視派。物語は必然的に現場主義者とデータ重視派の対決がクライマックスになる。
この映画を見終えて、観光業界に思いを馳せた。我々の業界もまた、コンピュータやデータだけではない、人があってこその業界。客や取引先など、現場で生じる人とのふれあいがすべてといってもいい。
我々が求めてきた「旅の特等席」は、古くて泥臭いと最近は耳にすることが少なくなったGiri(義理)、Ninjyo(人情)、Naniwabushi(浪花節)のGNN理論が担ってきたのかもしれない。老いてなお輝きを放つ主人公を見て、そんなことを思った。
(トラベルニュースat 15年6月10日号)