貸切バス運転手の今
本欄で、今春の運賃・料金制度施行以降、貸切バスについて幾度となく触れてきた。バス業界では運賃アップで経営環境は改善したものの肝心の運転手が足らず、車両は車庫にあっても動かせない状況にあるといわれてきた。しかも同じく運転手不足に悩むトラック業界から、バス運転手が引き抜かれ、深刻な運転手不足に陥っている。
このことは、観光業界に身を置く人なら一度は耳にしたことがあるだろう。しかし実際にはバスの運転手は全国で何人いて、どのような状況になっているのか、具体的な数字で示したものはなかったように思う。
今号1面で紹介したのは、北海道バス協会をベースにしたあるバス会社の現状分析レポートである。ここに示されたものは北海道だけでなく、全国のバス事業者にも当てはまる。レポートに記されたデータは現在の深刻な状況を数字で淡々と表す一方で、未来への対策を講じていこうという前向きな提言書でもある。引き抜きではなく、自社で雇用し育成していくという、当たり前と言えば当たり前のことが運転手を確保する一番の方法だと説いている。
高みであったはずの2千万人が目前に迫り、地方創生と銘打ち観光需要を掘り起こそうとする今、観光を支える人の育成に光を当てることこそが王道だと肝に銘じたい。
(トラベルニュースat 15年10月10日号)