旅館と共に歩いた人生
有馬グランドホテル会長の梶木雅夫さんが亡くなった。日本でも有数の旅館をつくり上げた梶木会長について2つだけ紹介したい。
一つは、お別れの会の弔辞で西村屋ホテル招月庭の西村肇さんも仰っておられたが、業界団体の役員の席に固執しなかったことだ。後任者が育つとあっさり会長職を譲り、任せてしまう。勲章目当てに何もせず役にしがみついている人は少なからずいるが、そういう人ではなかった。梶木さん自身は叙勲対象者で受章されているので、業界発展のために尽力した人が受章されることに他意はないことを付け加えておきたい。
次に梶木さんがすごいと思ったのは、どんなに遠方でも評判がいい旅館ホテルに泊まりに行ったことだ。インターネットによる集客が始まったころ、評判旅館を泊まり歩いている梶木さんに感想を聞いてみた。「インターネットでは宿のいい面ばかりを見せて、実際は取るに足らないところが多い。こんなことをしてはダメになる」との苦言だった。
旅館でバッタリお会いしたりすることもあり、その都度こんなところまで「確認」に来られているんだと感心させられたものだ。海外への観光キャラバンに行っても必ず独自で数軒のホテルを見て回っておられた。旅館の可能性にこだわり続けた一生だったように思う。合掌
(トラベルニュースat 15年10月25日号)