スキーバス事故に思う
15人の犠牲者を出した長野県軽井沢のスキーバス転落事故。亡くなった15人のうち13人が将来を嘱望された大学生だったことが、より悲しさを深めている。
我々にとっては、貸切バス運賃・料金改定のきっかけとなった関越道ツアーバス事故の記憶がまだ生々しい中で悲惨な事故が繰り返された。事故後、バス会社の労働管理の問題や国の基準を下回る安い価格での旅行会社の発注が明るみになるなど、2つの事故はまったく同じ構図だ。そして国が、全国の貸切バス会社を対象に運行の安全管理体制を緊急監査し、「格安バスツアー」を企画する旅行会社にも抜き打ちで立ち入り検査する...。これも既視感がある。
だから業界には自浄努力が足りないという論調が見受けられるが、それは違う。「安心・安全」、「旅行を通してお客様に幸福を」という思いで大多数のバス会社、旅行会社はやってきたし、やっている。そうして我々の業界は成り立ってきた。
2つの事故の共通点はもう一つある。バス会社が、国の規制緩和による新規参入組ということだ。規制をなくし自由競争を促すことで、経済成長につなげるという面は確かにあるだろう。だが、我々業界の根幹である「安心・安全」は自由競争にさらされるものではない。国の責任は決して小さくない。
(トラベルニュースat 16年1月25日号)