住民の感動こそ原点
年々観光客が減少していた温泉地が地域の強みを見つけたことによって多くの観光客で賑わうように転じたと、先日放送のテレビ番組が伝えていた。
その温泉地がある村は環境省の全国星空継続観察で「星が最も輝いて見える場所」の第1位に選定。しかし当初は地域のほとんどの人が「星で人を集めることなんてできない」と思っていたという。そこで実際に数人で闇夜の高原まで行き、天空に輝く無数の星々を見たとき、全員が感嘆の声を上げた。「これはすばらしい。多くの人に見せたい」。そうしてスタートして初年度から2年間は低迷したものの、口コミなどで人気が集まり、昨年度は6万人を集客。「星空ナイトツアー」のメッカとなり、「星の村」のブランド化を進めるまでになった。
JAXAや旅行会社などとタッグを組んだこの村の取り組みは観光業界では比較的知られた話だ。
国の地方創生の後押しで、地域の風土や人と関わる旅行商品の開発が行われ始めた。それ自体はたいへん喜ばしいことだが、まずはこの村の人たちのように「地域の素材に感動し、他地域の人に見てもらいたい」と思えるかどうかを出発点にしてほしい。地元に住む人たちが関心のないものによそもんが感動するはずはないから。
(トラベルニュースat 16年5月10日号)