下呂温泉の着実な歩み
観光客の入込集計は、地域の観光動向を把握する基礎的な指標だが、単なる行政発表と捉え、集計結果をどれほど有効的に活用しているかは地域によって大きなバラツキがあるように思える。最近では、まち・ひと・しごと創生本部のRESAS(地域経済分析システム)といったビッグデータも提供されている。
岐阜県の下呂温泉は、宿泊統計を最大限生かした取り組みを行っている。国内外からの宿泊客が毎月どこから、どのような交通機関を使って入り宿泊したかまで綿密に調べている。ある月の宿泊者数の目標数値を達成できなければ、その翌月に旅行情報誌を活用したPRや旅行会社、一般客を対象にキャラバンを即座に実施する。翌々月には目標数値を達成するよう手を打つわけだ。
2015年度、下呂温泉には104万人の宿泊客があった。この数字は、統計を元にマーケティングとマネジメントを行い、PDCAサイクルを行ってきた結果だ。赤字続きだった下呂温泉合掌村の黒字化に成功したのも、何年もかけて集客策を地道に進めてきた成果だ。
今年度は108万人の宿泊客を目指す。まちづくりや外湯整備などの課題に対して、住民と観光業者、行政が意識を共有、同じ目線になるところから始める。数値として成果を表す下呂温泉に注目したい。
(トラベルニュースat 16年6月10日号)