野口冬人さんを偲ぶ
旅行作家で現代旅行研究所代表の野口冬人さんが昨年12月13日に亡くなった。享年83歳。葬儀はご本人の希望により家族葬で執り行われ、後日、旅行作家の会で偲ぶ会を開く予定だという。
筆者が野口さんと初めて会ったのは20年ほど前で、ある取材で一緒になったのがきっかけだった。知り合ってからいろんな温泉地や観光地を回り、その都度おっしゃっていたのは「業界専門紙は業界の表も裏もご存知だ。僕たちのような作家には見栄えのする格好のいい表の話はくるが、そうではない話は耳に入ってきにくい。だからどんなことでもいいので、業界の動きを教えてほしい」ということだった。
1973年に現代旅行研究所を設立し、数多くの旅行書を手がけ、旅行関連本には必ず名前が出ている著名人で、親子ほど違う年齢差にもかかわらず、常に謙虚で最新の観光業界の動向をお尋ねになった。
漫画家の赤塚不二夫さんは、あるインタビューで「知ったかぶりはしない。何も知らないんで『学ぼう』というスタイルでいると、いろんな人がいろんなことを教えてくれる」と言っていた。
消費者や現場で働く従業員の声を静かに聞くことの大事さを野口さんの生き方から感じてきたのは筆者だけではなかっただろう。 合掌
(トラベルニュースat 17年1月25日号)