ダンディ貫く生き様
前回、この欄で旅行作家の野口冬人さんの訃報とその人柄をお伝えした。今回もまた故人を偲ぶ話題になるが、ご容赦いただきたい。
1月27日、山口県・長門湯本温泉の元白木屋グランドホテル会長の白木邦彦さんが亡くなった。82歳だった。白木屋グランドホテルは2年前に廃業してしまったが、現役時代の白木さんは、恰幅のいい体格に洒落たスーツを着こなし、ダンディという言葉がぴったりだった。それは行動も伴っていた。
当時の白木屋グランドホテル大阪営業所の所長から、こんなエピソードを聞いたことがある。白木さんは近畿日本ツーリスト協定旅館ホテル連盟の会長を長く務められ、旅連会長として大阪に来る機会も少なくなかった。その際、所長が「せっかく来られたのですから、何軒かでも営業にまわりましょう」と声を掛けても、白木さんは決して首を縦に振ることはなかったという。
「私は、公務でここに来ているんです。私的なことと混同してはいけない。営業をするなら一度、現地に帰ってから来ます」
もしかすると、そんな律義さが旅館廃業につながったかもしれない。だが人として、大手や中小の旅行会社を問わず、案内所で働く人たちからも愛され、深く付き合った。ダンディを貫いた生き様だった。 合掌
(トラベルニュースat 17年2月10日号)