格安モデルの破たん
年度末に激震が走った。てるみくらぶの破たんである。最初に異変が報じられた3月24日の数日前に一般紙でツアー募集の全面広告を展開していたし、一時とは言え山田千賀子社長を成功している女性経営者と報じたマスコミもあった。薄々感じていたという業界関係者もいたらしいが、多くは寝耳に水である。
その後は、帰国できない客がいる、4月入社予定の50人の学生らに内定取り消しを通知した、粉飾決算を繰り返していたなどと続報が相次いだ。嘘を重ねて続けた結果、綻びの収拾がつかなくなったのか、それとも確信犯だったのか。現金一括入金の格安キャンペーンなどもやっていたのだから、涙の会見は鼻白んだ。
それにしても旅行業界へのダメージは小さくない。業界に悪影響を与えるのは、このところ同じビジネスモデル破たんにある。格安を売りにしたツアーバスが甚大な事故を起こしたのも記憶に新しい。知人の旅行会社経営者は「これでますます大手や直販に流れる」と嘆く。被害に遭ったお客さんはもちろんだが、真面目にコツコツ信頼を得てやってきた中小零細旅行業者が十把一絡げに苦境に立たせられるのはどうか。
今回の破たんを報じるメディアの中に、旅行業界は"夢を売る"と書いていた。安売りを尊ぶのは、業界内外ともに、もうやめよう。
(トラベルニュースat 17年4月10日号)