データとおもてなし
ある百貨店が顧客のデータベースを活用し、来店した顧客にひと声かける取り組みを始めた。「Aさん、いらっしゃいませ」というものだが、それが顧客から大ブーイングを浴びた。顔も知らない店員から名前を呼ばれることに“不気味さ”を感じ、さらに、なぜ口をきいたこともないない店員が自分の名前を知っているのか、と。つまり、この百貨店では個人情報が筒抜けになっているということで信頼を落としたらしい。おまけに売り上げも激減したという。
以前、旅館の若手経営者から「我々の仕事がお客様に感謝されるのは、人と人との顔が見えるふれあいがあるからだ」という話しを聞いたことがある。曰く、著名なホテルのドアマンが1千人の顧客の顔を覚えていて声をかけてあいさつをするという伝説的な話がある。これをデータベース化したものを持ち、顧客に声をかけたところで顧客の心には響かない…とも。
顧客の人となりや顔見知りであるからこそ気持ちが伝わるのであって、いくらデータを元に同じことをしても本質的なものを伝えることはできない。互いの顔が見えるからこその信頼であり、そこからしか関係を結び深めることはできない。これは旅館業に限らず、旅行業、観光業全般にも当てはまるのではないか。「おもてなし」の原点だと思う。
(トラベルニュースat 19年6月25日号)
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