対馬と韓国人観光客
長崎県の離島・対馬。飛鳥時代に白村江(はくすきのえ)の戦いで防衛のための狼煙台や防人が配備された島だ。島のほとんどが山で、平地はほとんどないという島だ。対馬市の発表によると2018年の同市への韓国人観光客数は40万9882人で、対前年比約5万4千人増と7年連続で過去最多を記録した。
数年前に対馬を取材で訪れたが、港は韓国人観光客ばかりで、圧倒されたことを思い出す。その対馬が“反日”のヒートアップで韓国・釜山とを結ぶフェリーが運休、対馬の観光業が大きな打撃を受けている。日本よりも釜山からの方が近いという地の利が韓国人にとっての手軽な訪日旅行だったのだろう。歴史があり、平地は少ないがゆえに多様性に富む食や文化を生み出してきた。それが対馬ならではの魅力であり、韓国人にも身近な海外旅行として支持を得てきたのだろう。
それが、政府間の対立に端を発した反日や自粛ムードをもろに受け、韓国人観光客が激減したのは気の毒でもある。
しかし、規模の大小はあるにせよ、特定の国から、もしくは市場から集客を頼る構造になってしまうと、いつ対馬のようになるかもしれない。改めて観光は“全方位外交”を基本に、多様性を担保しなければならないと改めて思う。
(トラベルニュースat 19年9月10日号)
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