銀山温泉の危機対応
最大震度6強を観測した3月16日の東北地方を襲った地震。同日、山形県の銀山温泉に宿泊していた知人が地震に被災した。銀山温泉は地盤が固いため地震の影響はほとんどなかったそうだが、最寄りの在来線はストップ。山形空港までのバスは運行していたものの、航空便は満席で乗ることができなかった。
どうしたものか考えていると、旅館から「旅館組合でバスをチャーターします。福島駅経由で那須塩原駅まで行けば、新幹線は動いています。料金はいただきますが、そこまで行けばお帰りになれます」と打診。知人は乗車し無事帰宅した。
バスが出発するとき、旅館組合の代表が「宿泊されたお客様に安全にお帰りいただくことが自分たちの責任であり、使命です」と話したそうだ。宿泊客に安心して泊まっていただき、何の問題もなくお帰りいただくというのが宿屋の原点。この当たり前とも言える原点を常日頃から念頭に置き、客を迎えているからこそできた銀山温泉の人たちの対応。
知人は「本来なら翌日、山形観光を楽しむ予定だったが、それ以上の感動と感謝の旅となりました」。万が一、不慮のときの対応次第で宿屋、温泉地のファンが生まれることもある。いざという時の危機管理、リスクマネジメントの大切さを知人の話から改めて感じ入った。
(トラベルニュースat 22年3月25日号)
- ナイキの失速に学ぶ(24/11/15)
- インバウンドと富裕層(24/10/25)
- 「あまろっく」に思う(24/10/11)
- 「バスの日」に思う(24/09/26)
- 高付加価値化とは―(24/09/10)
- 臨時情報下の同調圧力(24/08/28)
- 百年先を見る道後温泉(24/07/26)