人と人を紡ぐ観光業
大阪の小学校の修学旅行を数多く受け入れている四国の観光地がある。今年度も半期で6千人を集客した。体験メニューが豊富で、子どもたちは何らかの形で体験を行うようになっている。
体験メニューを造成している担当者に、どの体験が一番喜ばれているのかを聞いてみたところ「宿泊は農家なんですが、どの体験よりも農家に泊まって家主であるおじいさんやおばあさんと料理の手伝いをし、一緒に夕食を食べながら話をする―この『体験』がもっとも子どもたちに喜ばれています」という。
自然体験や農業体験よりも夕食時の「会話」が子どもたちの心に刺さるらしい。修学旅行から戻ると、別人かと思うほど成長し積極的に人と関わろうとするそうだ。その様子に親もびっくりして、教師に「何があったんですか」と聞いてくることも少なくないという。
「両親が共働きで“レンチン”夕食を1人もしくは兄弟だけで食べ、会話のない食事をしている反動かもしれませんね」。観光地の担当者は学校側からそう聞かされたそうだ。子どもたちだけでなく、大人も孤食が少なくない。皆でわいわい言いながら食事をする環境をつくるのも、人と人を紡ぐきっかけを生じさせるのも観光業の仕事。我々が果たす役割は今決して小さくはない。
(トラベルニュースat 23年11月10日号)
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