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「深化」する東尋坊

24/05/13

福井県を代表する名所の一つ東尋坊。バスツアーなどによく組み込まれており、テレビのサスペンスドラマでも犯人が追いつめられるシーンの定番スポットとして知られる。しかし、その本質は、柱状節理といわれる巨大な岩壁が1キロにも渡って続く他では見ることのできない景勝地であることだ。

その様は朝鮮半島の金剛山、スカンジナビア半島のノルウェー西海岸と並んで柱状節理世界三大絶勝に位置づけられているほどなのだが、学術的な興味がない人以外、世界に誇れる名所であることに気づかない観光客がほとんどではないか。

その理由を東京大学で建築設計学を研究する川添善行さんは「周辺がコンクリートとアスファルトに覆われ、柱状節理よりも人工舗装が目立ってしまい、素晴らしい景観であることに気づけない」と指摘する。現在、川添さんを中心に東尋坊を緑化し、地形が育んできた文化や歴史を感じることのできる場に生まれ変えようとする事業が始まっている。

旧来の単なる立寄り先の観光地としての価値観が古くなったことで、本来その地が持っている本質的な魅力を再度磨き「深化」させ新たな名所にする。持続可能という流れの中で、すでに同じ発想で取り組んでいる観光名所もあるだろうが、東尋坊が進める深化を見届けたい。

(トラベルニュースat 24年5月10日号)

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