百年先を見る道後温泉
愛媛県松山市の道後温泉本館が今年、明治27年の本館改築から130年の節目を迎えた。と同時に5年半に及ぶ保存修理工事を終え、7月11日に全館で営業を再開した。
この本館を建築したのが道後湯之町の初代町長、伊佐庭如矢。当時の町予算の20年分を超える費用(現在の金額で40億円)をかけるとあって、苛烈な反対運動が起こり、身の危険が及ぶ状況に陥るほどだった。にもかかわらず、伊佐庭町長は生命をかけて道後温泉本館を完成させた。そのうえ、松山市街から道後温泉まで鉄道(現在の伊予鉄道)を走らせ、廃城危機にあった松山城も公園化した。現在の道後温泉の繁栄や松山市観光の土台を築いたのは、伊佐庭町長と言って過言ではない。
「100年たっても真似のできない物を造ってこそ意味がある」と本館を建てる際に言い切った伊佐庭町長の思い。それは今、道後温泉誇れるまちづくり推進協議会(宮﨑光彦会長=宝荘グループ)が引き継いでいる。このほどまとめた「道後温泉2050年ビジョン」は、100年後の温泉街の景観を考えたまちづくりを行う過程として、30年先を見据えた内容だ。
道後温泉が実践してきた百年の計は、観光が世紀をまたぐ視座で取り組む遠大な産業であることを思い知らされる。
(トラベルニュースat 24年7月25日号)
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