「あまろっく」に思う
兵庫県尼崎市の尼崎閘門(こうもん)は、パナマ運河と同様に水位を調整することで海と運河の船の航行を可能にするとともに、台風による高潮からまちを守る役目がある。地元では「尼ロック」と言われ、最近では観光素材としても一役買い、閘門のクルーズ体験などが行われている。ご存じの読者もいるだろう。
先日、知人の勧めで同名の「あまろっく」という映画を見た。笑福亭鶴瓶や江口のりこ、中条あやみら豪華キャストが出演しているのだが、鶴瓶が演じる工場経営者は、本業は社員任せで隙を見つけては近所の人たちとのしゃべくりばかり。商店街を歩けば、買い物中のおばちゃんと井戸端会議を始める。地元の人たちを和ませ、社員や家族に「しゃーないなぁ」と思わせる。そんな様子に尼崎というまちの魅力が画面を通して伝わってくる。
一方で、怠け者のお父ちゃんを見かねて娘は叱責するのだが、本人は「俺は尼ロックなんや」とのたまう。愛する家族、大好きなまちを見守っているという意味の暗喩なのだが、それは映画を見てのお楽しみ。
もう一つ彼の口ぐせが「人生に起こることは、何でも楽しまな!」。コロナや天災に見舞われても周囲を明るくし「ほな旅にでもいこか」と誘う、地元密着の中小旅行会社の経営者を思い浮かべた。
(トラベルニュースat 24年10月10日号)
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