国内旅行の需要喚起へ 4つのシナリオ(2)
誰になにを売りたいのか、どんな人たちに、どう利用してほしいのか。商品の販売や誘客と同じように、「国内旅行の需要喚起」を考えるときにもターゲットを明確にすることが必要というわけだ。
魅力の創造と障害の解消 財団法人日本交通公社
日本交通公社では、毎年自社がまとめている旅行者動向調査をもとに、国内旅行者の市場を(1)旅行したいと思い実際に旅行している人(2)特に旅行したいと思わないけど実際に旅行している人(3)旅行したいけれど実施できない人(4)旅行したいと思わず、実際旅行していない人―の4タイプに分けるところから、需要喚起策の検討をスタートさせた。
それぞれの市場規模は推計で「旅行したいと思い旅行している人」49%、「旅行したいと思わないけど旅行している人」29%、「旅行したいけど旅行できない人」9%、「旅行したいと思わず、実際に旅行していない人」14%程度となっている。
まず、第1のシナリオとして示しているのが「旅行したくて旅行している人」にもっと多く、もっと長期間の旅行を促す方策だ。リピーター対策とも言え、効果も現れやすく、ここでは(1)ニューツーリズムなどライフステージやライフスタイルに応じた旅行の提案(2)長期旅行を計画しやすい休暇制度や受入体制でくり―などを対策としてあげている。
2番目は「旅行したいと思わないけど、旅行している人」向けのシナリオで、(1)業務出張を観光につなげる魅力づくり(2)帰省先での観光消費額を高める工夫(3)ついでの観光を促す情報発信―が効果的だとしている。
次に「旅行したいけど実施できない人」に向けては、実施できない理由の解決策に重点を置き、(1)弾力的な学校休暇制度の導入(2)旅行休暇の取りやすい職場環境づくり(3)旅行減税の検討(4)旅行先のバリアフリー―をあげた。
意欲はあるけど旅行できない大きな理由には、休暇と経済的な問題がある。だとすれば、休暇だけではなく、派遣労働者と正社員の賃金格差の解消や生活水準の二極化の問題に、観光業界としても踏み込む必要がありそうだ。
最後に「旅行したいと思わず、旅行しない人」に、いかに旅行してもらうかだが、これまで手をつけずにきた市場だけに、対策も難しそうだ。
シナリオでも、この市場に対する需要喚起は「中長期的課題」と位置づけ(1)学校教育の現場から始める旅育(2)新しい時代に即した旅行の魅力と価値の創出―などが必要としている。
これまで、4つの市場について、需要を増やす方向のみに注目しシナリオを紹介してきたが、余暇活動の多様化による旅行の相対的な地位の低下や、少子・高齢化による介護の負担増大は、どの市場の旅行需要にもマイナスの影響を与える可能性がある。
マイナスを食い止め、さらに2010年に国民の年間宿泊数4泊を目指すうえでも、4つのシナリオは参考になりそうだ。
(トラベルニュースat 08年4月10日号)