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第3極を目指せ 国観連がアウトレットサイト(2)

観光庁は10月、今年度の観光産業イノベーション促進事業を採択した。大人の滞在型観光システム構築事業、宿泊施設予約通知フォーマット標準化事業など6つの事業で、いずれも民間が実施主体となり行い、観光庁は総額2000万円の助成金で支援する。

深夜チェックインや泊食分離 新たな需要創造

国観連が取り組むのは、このうちの1つ「旅館客室流通効率化・高度化事業」。国観連が中心になり、これに宿泊予約サイトのジェイヤド、リクルート系の総合情報サイトオールアバウト、旅館再生など宿泊ビジネスをサポートする日本ベストサポートがコンソーシアムをつくり実証実験に取り組む。

実証実験の方法やコンソーシアムの企業選定では、オールアバウトのガイドであり、日本ベストサポートの株主であるツーリズム・マーケティング研究所の主任研究員、元JTB社員の井門隆夫さんがアドバイス役を務めていることでも注目される。

実証実験の背景には、大手旅行会社を中心とした旅館の客室流通が十分に機能していないのではという疑問がある。

昨年3月に国土交通省がまとめた「観光旅館・ホテルの客室流通の効率化に関する調査研究」では、大手旅行会社に客室提供しているうちの年間販売率は平日で24・2%、黙っていても売れるとされてきた休前日でも45・4%で、平日では4部屋中3部屋、休前日でも2部屋に1部屋が売れ残っている結果となった。

売れ残り、宿泊日の2―3週間ほど前に旅行会社から旅館に引き上げた客室について、旅館では改めてネットエージェントへ振り替えたり(27・0%)、自館ホームページでの販売(24・4%)に取り組む方法をとっている。

こうした、大手旅行会社による販売率が休前日でも年間を通じて半分以下にとどまっていることや、さらに再販のチャンスとなる客室引き上げ後の販売期間が短いことが、販売チャンスの逸失につながっているという見方につながっても不思議ではない。

一方で、売れ残った客室の再販について、旅館の17・2%が、引き続き旅行会社に任せるとした回答も同じ調査で明らかになっている。

依然として強い旅行会社への依存体質、低い販売率、短い再販可能期間は、いずれも旅行需要の拡大にとってもネックとなるものだ。国民1人当たりの年間観光宿泊数4泊を目標にする観光庁としても、看過できない分野であり、今回のイノベーション事業につながった。

実証実験は、12月に新たな実験用の宿泊予約サイト「旅館プレミアムアウトレット 宿あそび」を立ち上げて行う。

主に客室販売率の低い平日を対象に、泊食分離や深夜チェックインプランなど、新たに需要を創造できるプランを設定する予定で、国観連の正副会長や支部長ら60―70軒に呼びかけ客室提供の協力を得ることにしている。

国観連専務理事の小関政男さんは「実験では、新しい需要の開拓と、オフ期や平日の販売対策に取り組みます。直販比率のアップも狙いたい」と、控えめに意気込みを話す。

しかし、実際にはじゃらんネットや楽天トラベルなどのネットエージェントでも、平日対策や需要開拓には取り組める。それくらいネット予約サイトの使い勝手はよくなっている。

実証実験に参加する西日本の旅館は、実証実験への期待をこう話す。

「かつてリアルエージェントとの関係がそうだったように、旅館が旅行会社に頼りすぎると旅館にとって手数料率のアップというような形で反動がきます。台頭しているネットエージェントについても同じことが起こる可能性があります。そうならないためにも、自分たちの販売ルートを持つことが重要です」

宿泊団体自らが行政の支援というまたとない好機を活かし、リアルエージェント、ネットエージェントに伍して戦える第3極となる流通ルートを構築できるのか。実証実験が、第3極の実現を占う試金石となる。

(トラベルニュースat 08年11月25日号)

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