2010年の観光トレンド予測(4)
高速道路の休日1千円は、国内旅行の動向に大きな変化をもたらした。
車で行き、食や地域と"感交"
ズバリ「車」とは名古さん。ガイドブックは遠隔地が売れており、今年はさらに「JAL再建の関連で廃止路線も増えることから、国内旅行は車」が常識化しそうという。高橋さんは今年のトレンドを"車洋族"として「高速道路の無料化で車での旅行が増え、近場や日帰りが伸びる」。洋はインバウンドの増加、「族=家族での旅行も増える」とみる。
車に限らず旅を人の移動と捉えると「様々な業界や事業スキームを持った企業などの参入が本格化する年になる」と丁野さん。永山さんは「ネット市場とリアル市場の垣根がなくなり、両者の差異が不明確になる」とし、「旅行会社を取り巻く第2の変動が始まる」と予測。玉置さんは、高速道の無料化と鉄道やフェリーの対抗値下げで「デフレがさらに進行しそう」。
では消費者はどうかというと、井門さんの指摘する「環境志向が一層進み、若い世代を中心に自然回帰し始める」ことがトレンドになりそう。「山」や「森」(井門さん)に加えて、より身近な食への関心が高まる。
久保田さんは「食べるのは食材ではなく、皿の上に手間をかけて凝縮された料理人の生き様や世界観、地域の物語」であり「食べるという場面で失いつつある家族や仲間の絆に気づく」として「私たちは身体を使ってリアルな場を共有するコミュニケーションを取り戻したい。"食べる"が流れを変えるはずだ」。
また、大社さんも「農家レストランが流行しているように、素材を生かしたありのままのデスティネーションの魅力が注目を集める」。李さんは「農山村において自立的生活をショールーム的に体験させてくれるような観光」が画期的に飛躍するのではと予想する。
小原さんは、地元で「嬉野紅茶とティーカップ」「緑の豆腐」などの活動を推進し「不況と言わない! 厳しい!と言わない足腰の強いまちづくりを行う」と決意する。
今年、注目を集めそうな地域を挙げた人もいる。「富士山、瀬戸内、屋久島。聖地感覚が世に欲され、人々は自らの巡礼へ旅立つ」(井門さん)、「坂本龍馬ファンの存在と主演の福山雅治さんの超人気ぶり、さらに歴女ブームと絡み合い京都、長崎、高知」(名古さん)に注目する。玉置さんは昨年の阿修羅展の大ブレイクを筆頭にした仏像ブームが、デフレと相まって「入場料がタダあるいは格安で、精神的に満たされる施設が優位」として仏像や寺社に利があるとする。
市場全般について、井門さんは「充実した日帰り、2泊以上の旅行の二極化が進み、1泊旅行狙いでは週末偏重が一層顕著で経営は悪化」、大社さんも「消費を抑え車の中で寝泊りする0泊2日が増える」。
その対抗策の1つに永山さんは「今だから行かなければならない、時間の価値観をより高めた『MUST観光』で需要を増やさなければならない」という。
2010年は「知恵を絞り」(山田さん)、「身近なことから率先して実施」(丁野さん)し、「五輪やW杯と同じレベルの"感動"を提供」(井門さん)する。そして松坂さんのいう「観光をフィーリング(感じること)とコレスポンデンス(客同士、客と事業者、客と自然の交流)の『感交』化させたい」ものだ。
(トラベルニュースat 10年1月1日号)