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グレーター・チャイナきた JATA国際観光会議・講演(2)

寺島さんは1990年以降の約20年間で、日本の貿易総額に占めるアメリカのシェアが27%から14%に減っているのに対し、中国は4%から21%へ拡大。さらに中国に香港、マカオ、台湾、シンガポールを加えたグレーター・チャイナで31%、アジア全域では50%を占めるまで拡大していることを紹介し、「このことを認識することが大事」と話した。

寺島実郎さん講演 「全ビジネスの基本」アジアの力を視野に

こうしたなか、尖閣諸島での漁船衝突事件については「大きなトレンドでは悲観の必要はない」との見方を示し、むしろ今後、グレーター・チャイナから年間千数百万人、韓国から年間400―500万人が日本を訪れるとし、「そうした覚悟がありますか」と問いかけた。

また、寺島さんは2010年版の通商白書の予想値などを引用しながら、グレーター・チャイナやインドを中心とするアジア圏の中間所得層の拡大にも言及した。

アジアで、可処分所得が5千―3万5千ドルの中間層が2000年に2億人だったものが、09年には9.9億人に達し、10年後の20年には20億人に増加する。このうち富裕層は2.3億人を占め、これはEUを上回る。

寺島さんは「アジアにうねりのようなエネルギーが起きている。あらゆるビジネスで視野に入れるべき基本」などと述べた。

そのうえで訪日客拡大の鍵としては、羽田空港国際化とLCC(ローコスト・キャリア)をキーワードにあげたほか「骨太の観光立国論」が必要だと指摘し、一例として「パリ・ジュネーブモデル」をあげていた。

両都市には国連機関や国際貿易機関があり、年間40万人の国連関係者や多くの企業関係者、ジャーナリストが「行かざるを得ない」環境がある。これをパリ・ジュネーブモデルと呼びながら「安売りだけでなく、質の高い来訪者を引き付ける装置が必要」と国際機関の誘致や、羽田空港の後背地に医療ツーリズムを受け入れる医療特区を設置するなど、後背地の活用策を提言していた。

11万1千人来場 世界旅行博

世界旅行博への出展は昨年より10カ国ほど少ない139カ国・地域。尖閣諸島での漁船衝突事件で中国が急きょ出展を取りやめる不測の事態もあったが、3日間で前年よりわずかに多い11万1千人が来場した。

内訳は一般来場者7万2千人、旅行業界と報道関係者が3万9千人。

国際観光会議の開会式典でJATAの金井耿会長は、今年7月までの海外旅行者数が前年比で10.8%増と回復基調に乗っていることを紹介しながら「旅行の満足を、次の新たな需要につなげるために何が必要かを一緒に考えたい」と会議への期待を示していた。

池口修次・国土交通副大臣は政府が新成長戦略で観光を7大成長分野の1つに位置づけていることを示しながら「訪日旅行者3千万人、海外旅行者2千万人という双方向の観光交流促進に取り組んでいきます」と国の姿勢を紹介していた。

(トラベルニュースat 10年10月10日号)


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