祝・なでしこジャパン スポーツ観光の底力(2)
シンポジウムはフィットネス産業やゴルフ、テニス関連産業が加盟するスポーツ健康産業団体連合会が主催。パネルディスカッションでは、震災復興支援にスポーツが果たすべき役割や、震災をきっかけに、スポーツと観光の融合による観光のイノベーションに取り組むべきなどの意見が交わされた。
真のツーリズムへ好機 復興支援でシンポ、"光"与える力に共通点
パネリストは4人。観光業界からは丁野朗・日本観光振興協会常務理事と、加藤誠・JTB地域交流ビジネス統轄部長が参加した。
丁野さんはまず、スポーツ業界や観光業界が震災をきっかけに「平時では気づかないスポーツや観光の底力、多様な可能性を発見しつつあるのでは。この可能性をどう生かすかが問われている」と問題提起。
加藤さんも、なでしこジャパンの優勝に触れながらスポーツの底力を「暗い生活のなかで明るさをもらったという感想に代表されるように、スポーツは見るだけでも人々に明るい元気な感情を与えることができる」と表現。目的であるスポーツに移動を付加しただけの従来のツアーから、観光とスポーツがともに持つ、文化の力、経済の力、交流の力、健康の力、教育の力の5つの力を融合させた真のスポーツ・ツーリズムに脱却を図る好機だと指摘した。
一方で、丁野さんからは「現状はスポーツと観光の両者に垣根がある」との指摘もあり、加藤さんは「とにかくツアー商品を作ることが観光とスポーツの橋渡しになる」と旅行会社としての役割に触れた。
震災後の商品や商品力についての考えも示された。月刊レジャー産業資料の近藤みちよさんは、安全なスポーツの場の提供と生活者の意識の変化への対応に注目。「放射能汚染があるなか、スポーツの安全をいかに提供できるか、また、自粛のなかでも遊びたい人、スポーツしたい人に場を提供し続けられるかにスポーツ産業の底力が試されている」などと指摘した。
加藤さんは「長期休暇の取得や長期滞在が増えるなか、滞在中のスポーツの提案には大きな可能性があります。また、海外で行われるスポーツの国際大会を、日本の若者を海外に連れ出すきっかけにするようなツアーづくりも必要でなないでしょうか」と、震災やなでしこジャパンの優勝を新しい旅行需要に結びつける方策を提案。
最後に丁野さんも、「震災以前からレジャー産業は下降線の一途でした。観光は元に戻るだけではダメで、スポーツ・ツーリズムの構築など、イノベーションや新しいものを生み出す努力が必要」などと話した。