2012年の観光を占う 7氏の「観字」検定(4)
時間は、歴史は連綿と続いていく。過去は断ち切れないが、未来は創ることができる。
新しい天地に飛翔する
松坂健さんは「翼」を決意の言葉として選んだ。「今年の日本は断崖絶壁から落とされた状況から、どう脱出するかが課題」として、SF作家のブラッドベリーの言葉を引く。「崖から落ちたら、翼を生やせばよい」。
そうなのだ、と松坂さん。「落ちきる前に、死にものぐるいになれば、きっと翼が生えてくる! そうなれば、まったく新しい天地に飛翔できるではないか」。
未来を創るためにも、飛翔するためにも「堅」を掲げたのが永山久徳さん。「激変する環境の中で、堅固な意思で防御を固め、信念を堅持することが必要」と、この1字の意味を解説する。信念を堅持することは「大衆迎合的な流行の中から、真のトレンドを見極める堅実さ」が生じ、難局を乗り切れられるとする。
清楚なコミュニティやスカイツリーの必然
李有師さんは、そのトレンドを「美」と予測する。「無為な大きさや漠然としたデラックスよりも、シンプルな『美』に心惹かれるようになる」とみる。その結果として「必然的に旅先に求めるものは金銭で得る多寡よりも、ゆるゆるとした時間や来訪先のなにげない美(例えば、観光コミュニティが結集したような清楚な美)に、人気が集まる」としている。李さんのいう美とは「カネでは買えない『時間の蓄積』」なのだ。
西洋のタロットカードで崩壊や終焉を意味するカード「塔」を挙げたのは井門隆夫さん。ロンドン五輪が開かれる今年を「4年前にはリーマンショックが起きたように、『オリンピックの年』は地球環境や政治経済の変化が起こるので要注意だ」と指摘する。
ただ一方で、塔は「再生や復活をも意味する」という。「東京タワーのできた1958年には岩戸景気が始まり、太陽の塔の立った1970年から旅ブームが本格化した。スカイツリーが完成する2012年も日本の復興初年度となる」と、井門さんは塔の1字に思いを託した。