旅館業界面前の課題 全旅連全国大会記念対談(2)
―会長と会長代行との役割分担はどのようにされていますか。
佐藤 大木さんとは青年部時代から20年来の付き合いです。大木さんが11代青年部長、私が12代青年部長でした。私が全旅連の会長としの職務を遂行するにあたり、よく補佐していただき感謝しています。
大木 トップが最初から前面に立たない方がいい問題を、会長の名代として担当するのが私の役目だと思っています。この体制で3期5年目に入りました。震災をはじめ、さまざまな問題が起こり佐藤会長の仕事量はとても増えていますが、そうしたなかで役割分担はうまくできていると思っています。
被災者525万泊を受け入れ 固定資産見直しへ道筋
―まず東日本大震後の対応について伺います。
佐藤 震災後の報道で、30万人の避難民がいることを知って大変なことだと思いました。中越地震の際に旅館で被災者を受け入れた経験があったので、今回も被災者の避難所として旅館を使ってもらおうと考えました。3月13日に国土交通大臣に直接申し入れました。受け入れ可能人数を問われましたので、すぐに各県の理事長にお願いして受け入れ人数を集計し、全国で10万人規模の受け入れが可能だと返事をしました。最終的に520万人泊の被災者、総額で300億円ほどの受け入れとなりました。被災者には、安全に安心して家族が一部屋で過ごせるということでたいへん感謝されました。組合員の皆さまの協力には、とても感謝しています。
大木 佐藤会長は震災対応に明け暮れた1年でした。山形県の旅館ですから被災の間接的な当事者でもあるなか、よくやっています。さらにすごいのは震災対応に全力で当たりながら、建物に関わる固定資産の評価の見直しへの道筋を確かなものにしたことです。震災があって財政負担が増えるなか減税を勝ち取るなんて普通はあり得ないことです。震災直後に私が担当したのは義援金です。1カ月以内に5千万円と目標を置き、業界内に義援金を募りました。この義援金はすべて被災県の旅館に届くよう手配しました。
原発事故賠償エリア拡大要求 東電値上げは抗戦
―震災関連では、東電の原発事故に対する損害賠償の問題、それから値上げの問題もあります。
佐藤 原発事故から1年が経っても、風評被害があります。損害賠償については文部科学省も経産省も被災者の側に立つという意思表示をしていただいていますが、東電が被災者の側に立っていません。原発事故による風評被害について、観光業の賠償対象エリアの拡大を求めていますが、なかなか前に進みません。
大木 外国人旅行者の減少に対してもきちんと損害賠償していただきたい。外国人旅行者の多い旅館ホテルにとっては死活問題です。東電は昨年5月までの予約キャンセルについての損害賠償には応じていますが、それ以外は無視しています。
佐藤 東電の「値上げは権利だ」という姿勢はまったく受け入れられない話です。東電は社員にはボーナスを出して、給与の見直しも最小限です。東電が本気で身を切らない状況で、値上げが必要なのかまったく納得できません。
大木 たくさん電気を使っている事業者から始めようというのは間違いです。一般家庭の値上げには経産省の認可というハードルがあるからと、値上げしやすい事業者から集めましょうというのは話が通りません。制度としても是正が必要です。