スポーツツーリズムを考える(2) 主役は「アスリート」
3月、東京と大阪でスポーツツーリズムを考えるコンベンションが相次いで開かれた。JSTA(日本スポーツツーリズム推進機構、原田宗彦会長=早稲田大学スポーツ科学学術院教授)が主催する第1回「スポーツツーリズム・コンベンション」と、関西経済同友会を軸に産学連携でスポーツによる産業振興に取り組むSC関西(スポーツコミッション関西、高橋一夫座長=近畿大学経営学部教授)の「スポーツ+(プラス)で関西を元気に!」。
大会開催で地域に人を
いずれも、全米スポーツコミッション協会のドン・シューマッハ会長が北米のスポーツツーリズムの現状や、スポーツツーリズムのあり方、推進の意義などについて話した。
シューマッハ会長はスポーツツーリズムの主役はアスリートだと繰り返し強調した。
「集客やホテルの稼働をあげることのみを目的とするのは問題。競技に焦点を当て続け、アスリートを大切にすること。質の悪いイベントは警戒しなければならない」。参加者が競技に集中できる環境の整備は大前提で、その上で収益面での対応をすべきだと説く。「中途半端は失敗を招き、将来の地域発展のビジョンに悪影響を与える」と釘を刺す。
現在、地域におけるスポーツツーリズムの関心は、自前のイベントをつくり誘客することに移っていると指摘。
「自前の大会は誘致や入札のコストがかからず、イベント開催の自由度も高い」。バージニア州リッチモンドではランニングやリバーレースなど、いずれもスポンサー企業名を冠した3つのイベントが人気で、年間でホテルに7万室の需要をもたらしているという。日本でも都市圏のマラソンが相次ぎ、ご当地グルメなどを組み合わせたイベントも目立ち始めた。
シューマッハ会長は「人を地域に誘致するツーリズムとしてあるべき姿」と話した。
さらに、イベントを成功に導く推進役には「まずスポーツの専門家を集めること。そのあとにビジネスできる人を追加し20人くらいのチームでやるべき」。スポンサー企業の獲得は「スポーツをしている経営者や、スポーツをしている孫を持つ経営者を探そう」などと具体的にアドバイスしていた。
「リーマンショック後の経済状況のなか、北米では不況に強いスポーツツーリズムだけがソリューションと言われています」とシューマッハ会長。日本のスポーツツーリズム推進にエールを送っていた。